ホラクラシー組織は上下関係がない組織じゃない
ホラクラシー組織は、よく次のように説明されます。
- フラットな組織
- 上下関係がない組織
- マネージャーがいない組織
- 合意で決める組織
この認識から、ホラクラシー組織は「理想論」「成功しない」と語る方も多くいます。
しかし、私はこの認識は間違いだと考えています。
本記事では、この誤解を解いていきます。
ピラミッド型組織
ホラクラシー組織を論ずるにあたり、まずピラミッド型組織の問題点についてまとめていきます。
ピラミッド型組織がもてはやされてきた理由
まずピラミッド型組織は長いこと正解とされてきました。
しかしそれはピラミッド型組織が絶対的に素晴らしいからではなく、ただ単にその時代にあっていたからでしかありません。
情報伝達コストが高い時代は、少ない人数にしか情報は共有できませんでした。
そのためピラミット型でなければ、全ての情報がトップに集約され、上から情報が滴り落ちていくように共有することは困難でした。
しかしITにより全社員に一瞬で情報を共有できる現代は、そのような制約はありません。
情報の透明化さえ徹底されれば、階級型でなければいけない理由はありません。
つまり現代において、ピラミッド型組織の優位性は失われました。
ピラミッド型組織での情報格差
今までは少数の上位層のみが意思決定をし、下位の人たちはただ単純労働をするだけの形で組織は回っていました。
しかしITによる自動化によって単純労働が減少しているいま、下位の人たちも何かしらの意思決定を伴う仕事が求められるようになってきました。
意思決定には、どれだけ情報を持っているかが重要になります。
たとえば「予算がわからない」「社長が次に何をしようとしてるのかわからない」なか、質の高いキャンペーンの施策立案は困難です。
つまり情報を上位者のみが独占するのではなく、全社員で等しく共有される必要があります。
しかしピラミッド型組織は、離れたレイヤー間のコミュニケーションが薄れる傾向にあります。
もちろん情報共有を徹底することも可能ですが、意識上どうしてもレイヤーで情報格差が生まれやすくなります。
不合理な意思決定者
またピラミッド型組織は、基本的にあらゆる面において上の人が偉いです。
すると、上位者があらゆる役割・意思決定を担うことになります。
- 部下と1on1を行う
- コードレビューする
- 技術選定する
- 他部署との調整を行う
- 予算管理を行う
- 採用活動を行う
- 部下の評価を行う
- 部下の教育を行う
これらは全く別の能力が求められる仕事です。
技術力が高く、調整力にすぐれ、マネジメント能力が高い人物なんてそうそういません。
しかしあらゆる意思決定がその上位者により行われるため、どこか欠落した意思決定がなされますと。
すると、次のような問題が起こり得ます。
- 技術力がないマネージャーが技術選定をしてしまい、負債となってしまう。
- マネジメント力のないマネージャーの元で、部下が離れていってしまう。
これを防ぐためには、それぞれの仕事に対し意思決定者を分けるのが適切ではないでしょうか。
ホラクラシー組織
そこで出てきたのがホラクラシー組織です。
ホラクラシー組織では、組織に必要な役割を先に起き、そこに人を当てはめていく考え方をします。
先の例だと、
- マネジメントを行う役割
- 技術選定を行う役割
- 他部署との調整を行う役割
- 採用活動を行う役割
- 教育を行う担当
などを先に定義し、そこに人を当てはめていくということです。
上下関係がなくみんな決めるわけではなく、その役割を担った人がピラミッド型組織のおける上位者の役割を担います。
つまり上下関係がないわけではなく、あらゆる面で上位に立つ人がいなくなるだけです。
ホラクラシーの目的は仕事を体系化することであって人を組織することではない。
HOLACRACY 役職をなくし生産性を上げるまったく新しい組織マネジメント
私にはホラクラシー組織を「フラットな組織」「上下関係がない組織」と抽象化するのは的を得ているとは思えません。
今まで通りあらゆる意思決定を役割を立てれば、見た目はピラミッド型組織と同じにもなり得ます。
つまりただ上位者を立てるか、役割を明示化しそこに当てはめるかの違いでしかないのです。
おわりに
経験上、ピラミッド型組織において、マネージャーの役割が明示化されることはそうそうありません。
そのため個々人の得意分野に合わせ、自分の考えるマネージャーの役割を担う傾向があります。
またマネージャーの役割が明示化されていないと、採用の基準も曖昧になり、採用後のミスマッチも頻発します。
ホラクラシーは単なる理想論ではなく、ピラミッド型組織の問題に答えた現実的な組織形態なのです。