アトキンソンの『日本人の勝算』と、管内閣

2020年の夏、安倍内閣が終わり、管内閣が誕生しました。
管総理は安倍路線の継承と言っていますが、当然ながら人が違えばやることは変わってきます。

管総理は経済に関する考え方はデービッド・アトキンソン氏の影響を強く受けていると言います。
この記事ではまずデービッド・アトキンソン氏の著書『日本人の勝算』の内容をまとめ、次に今後の日本を占っていきます。

日本人の勝算: 人口減少×高齢化×資本主義

日本が直面するパラダイムシフト

日本は次の要因により、経済的な状況は大きく変わっています。

  • 人口減少
  • 高齢化

これらは強いデフレ圧力を産むため、日本はこのままだとデフレスパイラルに突入してしまうとのことです。

GDPの成長要因

GDPの成長要因は以下の2つがあります。

  • 生産性の低さ
  • 人口の増加

今までの世界経済は人口の増加による経済成長によるものでした。
今後は、特に日本は人口が大きく減少していくので、生産性の改善を行わなければGDPが縮小していくと言うことでもあります。
そのため生産性を改善するのが重要というのが本書の趣旨となります。

日本の生産性

日本の生産性の低さはよく指摘されるところです。
「ハンコ出社」「無駄な会議」などがよく話題に上がるように、感覚値としても否定はできません。

特に本書によると、各国の人材評価と生産性は高い相関があるものの、日本の生産性はその人材評価に比べ低いそうです。

Low road capitalism と High road capitalism

生産性が低い理由として、Low road capitalism と High road capitalism がまず語られます。

Low road capitalism High road capitalism
競争の源 主に価格 主に品質
商品の特徴 マス市場 同類の商品 専門性の高い、カスタマイズされた商品
典型的な作業 特定化された作業 マルチタスク
スキル 低い 高い
研修 作業に特化されたスキル 具体的な技術 特定の作業を超えるメタスキル
研修プロセス 短い 企業が提供 生涯学習と再研修 企業と公共機関
仕事の自主性 低い 高い
階級組織 管理職と労働者の明確な区別 管理職の階級は複数 労働者と管理職の壁が低い 階級は少ない
所得 相対的に低い 相対的に高い

(『日本人の勝算』より)

日本は単価の安い単純労働者で価格競争する Low road capitalism が多いとのことです。

読前は「価格競争では中国に勝てない」と品質競争するものの、無駄な多機能で失敗する印象が強くありました。
ただそれはよく目に入る大企業の話で、中小企業は本書で指摘されてる通りなのかもしれません。
Low road capitalism の特徴を見ると、たしかに日本企業っぽさが垣間見れます。

企業規模と生産性

企業規模の大きい会社で働く人の割合が大きいほど、その国の生産性は高い傾向があるそうです。
企業単位でみても、その企業の生産性と企業規模は比例するそうです。

しかし日本は中小企業の数が他国に比べ多いため、中小企業の合併を促せというのが本書の指摘です。

なぜ企業規模と生産性に相関があるのか

統計上の計算は大きな見落としが生まれやすいため、なぜそうなるのかを考えてみます。

まず企業単位でみた場合、鶏と卵で生産性の高い企業ほど企業規模が大きくなりやすいだけに感じます。
しかし日本国の有限な労働者をどの企業に配分するかを考えれば、たしかに生産性の高い企業で働く割合が増えればたしかに全体の生産力は上がりそうです。

イメージとしては、商店街が潰れてイオンに変わる感じでしょうか。
商店街の個人商店に比べ、おそらくイオンのほうが生産性は高いでしょう。
日本から個人商店がなくなり、イオンのような大企業だけになれば、国としての生産性があがるイメージは湧きます。

合併すれば生産性はあがるのか

一方で、合併すれば生産性があがると言われると疑問に感じる面もあります。

人が増えるにつれ、本質的でない仕事も増えていきます。
上司の説得のための資料作り、承認フロー、部署間の調整、会議などです。
実際に大企業の仕事の生産性のなさに嫌気がさして、ベンチャー企業に転職した人は周りに多くいます。

もちろん、ナレッジの共有がなされるなどのメリットもあるでしょう。
しかし生産性の低さの本質は、そこにはないように感じます。

High road capitalism 企業に転職すれば生産性はあがるのか

個人レベルで見たらどうでしょう。

たとえば Low road capitalism 企業で働く人が High road capitalism 企業に転職したとします。
それまで単純労働をしていた人が、突然自主性の高い作業ができるのでしょうか。

どうしても単純労働人材という層は一定数存在し、その人たちに単純労働を割り振る必要性は出てきます。

派遣労働による単純労働者の分配

そう考えたときに、「派遣」という仕組みがその解決策なのではと感じました。

まず多くの事業は、どうしても最初は単純労働が発生します。
企業はその単純労働を、クラウドサーバのように派遣により調達します。
その後、DXにより生産性を高まっていくと、派遣の必要がなくなっていきます。
そうなると派遣労働者は次の企業・事業へ移っていきます。

こうして単純労働者を派遣により分配しつつ、継続して生産性を向上していくことで国力は上がっていきます。
ものすごく人間味のないアイディアですが、国がやろうとしているのはこれなのではとふと感じました。

最低賃金の底上げ

企業規模を大きくする他に、生産性を高める方法として最低賃金の底上げが語られています。
簡単に言えば、最低賃金で成り立っているような企業に生産性向上の圧力をかけれるため、生産性あがるよねという話です。

これに関しては理論的に非常に納得できます。
ただ本書では地方も含め一律で最低賃金を引き上げることを求めていますが、個人的にはそれだと地方の過疎化が進んでしまうのではと感じます。

今後の日本について

菅内閣のやろうとしていることは、たしかに本書の内容とのつながりを強く感じます。

  • 中小企業再編
  • 少子化対策

端的に言えば中小企業は生産性をあげるか潰れるかの2択を迫られることになるでしょう。
商店街が潰れてイオンに変わるような変化が、国全体として促されると考えられます。

また本書に書かれている最低賃金の底上げ、女性活躍なども合わせて進められていくでしょう。

自助・共助・公助

批判されることの多い自助・共助・公助ですね。
これは公助により生産性の低い企業を助けていると、いつまでたっても生産性が上がらないということなのかと推測します。

たしかに日本は黒船により開国させられたように、外圧がないと変化しない傾向があります。
今回もコロナによりリモート化が促されましたが、それでもいまだにリモート化できない企業もあります。

GOTOトラベル、GOTOイート

GOTOトラベル、GOTOイートも批判を浴びました。

観光業や飲食業は生産性以前の問題として影響を受けているため、助ける必要があります。
しかし単にコロナ渦に対応できないような生産性の低い企業は、過度に助けずに潰していきたいということかもしれません。

ゆるい連帯

では私たちはそれにどのように対応すれば良いでしょうか。

私としては「ゆるい連帯」が今後の鍵になると考えています。
つまりナレッジ共有の機会です。

たとえば美容師同士が交流する場で、「予約システムはこれ使うと簡単に導入できてコスト削減できるよ」みたいな情報を共有すれば生産性は上がります。
人材の流動性が上がれば「他の企業はこうしてるよ」という情報が展開されるかもしれません。

つまりは組織の外部から情報を得る機会を増やしつつ、それに合わせて組織を変化させられる柔軟さが今後は重要になってくるということです。

格差拡大

ここまでの議論を踏まえると、生産性の低い弱者に圧力を加え、生産性の高い企業を助けるような政策をとっていくと想像できます。
となると、今後格差はどんどん拡大していくでしょう。

  • High road capitalism 企業の経営者
  • High road capitalism 企業で働く知的労働者
  • 単純労働をする派遣労働者

そのため個人としては、社会に価値を提供し続けられるように生涯学習を続ける必要が出てくるでしょう。

おわりに

日本の整体や美容院で話を聞くと業務外で勉強しているという話をよく聞きます。
東南アジアなどの国はたしかに物価は安いんですが、質の高いサービスを受けるとなるとむしろ日本より高くなることもあるんですよね。
牛丼などもそうですが、日本はサービスの質の割に値段が安いのは旅行していても強く感じます。

管政権がどう転ぶかはわかりませんが、日本人のこうした真面目さが報われるような社会になってくれることを望むばかりです。

日本人の勝算: 人口減少×高齢化×資本主義


@dorarep
小学生の頃からフリーゲーム作ってました。今はフリーランスでフルスタックエンジニアしてます。