MVP制度は悪影響?モチベーションを最大化する競争のデザイン

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社員のモチベーションをあげるために競争させることってよくありますよね。

例えば優秀な人から出世していくのも競争ですし、MVPの表彰も競争といえるでしょう。

しかしその競争が社員のモチベーションに悪影響を与えていることはご存知でしたか?

競争とモチベーションの関係性と、そこから見る最適な競争の作り方について記載していきたいと思います!

モチベーションを産む競争と産まない競争

負けているがモチベーションを産む

行動経済学者のデヴィン・ホープらは、バスケットボールの試合データについて分析を行ないました。

そして2万件の試合データに対してハーフタイムの得点と最終的な勝敗の関係性を調査しました。

その結果、ハーフタイムのときの得点差が0に近い場合は負けてる方が勝率が良いことがわかったのです。

つまり人は自分が後れをとっていると思うと、モチベーションが上がるのです。

目標達成が近ければ近いほどモチベーションが上がる

ブラウンらが1948年にラットに対して、報酬までの距離と走る速度についての実験を行ないました。

その結果、報酬に近ければ近いほど速く走ることがわかりました。

つまり人は目標に近ければ近いほど、モチベーションが上がることが言えます。

負けすぎているとモチベーションを失う

行動経済学者のデヴィン・ホープらは、続けてテニスの試合データについて分析を行ないました。

その結果、第一セットをタイブレークで負けたテニスプレイヤーは、第二セットで平均して1ゲーム多く負けていることがわかりました。

つまり人は自分が大きく後れをとっているとき、モチベーションが下がってしまうのです。

勝っている人は逃げやすい

タックフィールドらがテニスの選手について調査した結果、本命と言われる選手ほど棄権しやすいことがわかりました。

勝っている人にとって、勝ちは現状維持で負けは失うことです。

すなわち失敗の回避のために、勝っている人は勝負から逃げやすいのです。

勝ってる人は言い訳を作るために不利な状況を作る

さらに、勝っている人はセルフ・ハンディキャッピングを行いがちです。

セルフ・ハンディキャッピングとは自ら不利な状況を作ることで負けたときの言い訳を用意し、勝利を際立たせるというものです。

例えば大事な発表の前にあえて徹夜をすることで、失敗したのは徹夜をしたせいで自分の能力が劣っているわけではないと逃げ道を用意するわけです。

そして勝っている人ほど、面目を保つためこのセルフ・ハンディキャッピングに頼りやすいというわけです。

ちょっと負けている状態が一番モチベーションをうむ

ここまでの研究結果をまとめると、以下のようになります。

  • 自分が後れをとっていると思うと、人はモチベーションが上がる
  • 目標に近ければ近いほど、人はモチベーションが上がる
  • 自分が大きく後れを取ってると思うと、人はモチベーションが下がる
  • 勝っている人は逃げやすく、負けたときの言い訳を作りやすい

つまり、ちょっと負けている状態を作ることがモチベーションを産むということですね。

競争環境による影響

以上の観点から、競争のある組織はどのような心理状況をうむでしょうか。

もちろん、競争によってモチベーションが上がり成功を積み重ねる人は生まれるでしょう。

一方で目標が離れていくことでモチベーションが下がり、さらに目標から遠ざかり競争の枠からはみ出てしまう人が生まれてきてしまいます。

また競争で優位に立っている人が、挑戦を避けたり、わざと成功しそうにないプロジェクトに注力するかもしれません。

つまり競争はモチベーションを上げる要因になりますが、下げる要因や、戦いから逃げる要因にもなるのです。

モチベーションを最大化する競争のデザイン

ではどうすればモチベーションを最大化する競争状態を作れるのでしょうか。

それはちょっと負けている状態を作ることがモチベーションを産むをいかに作れるかにかかっています。

その人より少しだけ成績の良い個人と比べる

まずその人より少しだけ成績の良い個人と比べてフィードバックすることで、ちょっと遅れていると認識させる方法があります。

米国でエネルギープラットフォームを提供するオーパワーでは、各家庭に届けるレポートに近隣の良く似た世帯との比較で、その家庭がどのくらいの位置にいるかを伝えています。

あえて近隣で一番良いパフォーマンスの家庭と比較しないことによって、ちょっと負けている状態を作り出しているわけです。

そうして自分よりちょっと優れている人とのみ比較することで、常にモチベーションが最大化される競争状態を作り出すことができるのです。

比較の対象を減らす

他には比較の対象を減らすというのもあります。

例えば全社の全社員の中で比較してしまうと、その中で争うのが不毛に感じて諦めてしまうかもしれません。

一方で同期やチーム内といった少ないグループで比較すれば、やる気の減衰を抑えることができます。

なぜなら比較対象が減ることで実力レベルの似た人同士で比べることができ、ひどく遅れているという感覚が生まれづらいからです。

したがって競争をさせるときはグループ分けするなど、比較の対象を絞って行うと良いでしょう。

  • 競争させるときは、その人よりちょっと優れている人とだけ比較する
  • 競争させるときは、比較対象が大きすぎないようにする

モチベーションを産む仕事の振り方

2008年の大統領選の時、オバマ陣営はディレクター経験豊富な人材より、ディレクター補佐を一度経験した人を好んでディレクターとして雇用したといいます。

これは人件費を抑えられることに加え、自分が少し遅れていると思っているためモチベーションが高く慢心することが少ないからだそうです。

すなわち実力より少し上の役割を与えることで、モチベーション高く仕事してもらうことができるわけです。

まとめ:モチベーションを最大化する競争のデザイン

人は少し負けている状態を作ることで、モチベーションを向上させることができます。

そして比較対象を絞ったりあえて少し実力より上の役割を与えることで、少し負けてる状態を作り出すことができるわけです。

なかなかチームのやる気が出ない、なんて悩んでいる方はぜひ試してみてください。


@dorarep
小学生の頃からフリーゲーム作ってました。今はフリーランスでフルスタックエンジニアしてます。