行動を促すためのアイデンティティを活かした組織の作りかた
なかなか思い通りにチームメンバーが動いてくれない!なんてこと良くありますよね。
何をしてもうまくいかない状況に日々ストレスを感じてしまっているのではないでしょうか。
しかしご安心ください。
アイデンティティをうまく扱うことで、チームメンバーにしてほしい行動を促すこともできるようになるのです。
今回は人々の行動を左右するアイデンティティと、それを活かしたチームづくりについて書いていきたいと思います!
アイデンティティとは
アイデンティティとは、自分自身を構成すると思っていることです。
これは自分自身だけではなく、例えば国家であったり、会社であったり、チームであったり、性別であったり、様々なものが含まれます。
アイデンティティの範囲
アイデンティティは必ずしもその人の所属とは一致しません。
たとえば全く会社に対してアイデンティティを持っていない人もいます。
一方で人種に強いアイデンティティを持っているなんて人もいるでしょう。
したがって、どこからどこまでをアイデンティティと捉えているかの範囲は人によって異なります。
アイデンティティに対する攻撃
アイデンティティに対する攻撃は自分自身への攻撃となり、人はそれを不快に思います。
したがって人はアイデンティティの範囲、つまり自分ごとにしている範囲には強い感情が伴います。
そのためそのことに対してのモチベーションが上がる一方で、他者と衝突してしまう原因にもなります。
アイデンティティの範囲内の出来事には、強い感情が伴う
アイデンティティの範囲は広ければ良いという話でも、狭ければ良いという話でもありません。
例えばチームに対して強くアイデンティティを感じている人がいたとしましょう。
この人はチームメンバーのケアをよく行ってくれたり、チームが成功するために一生懸命頑張ってくれるかもしれません。しかし一方で、チームはこうあるべきという思いを強く持っていてよく衝突してしまうかもしれません。
反対にチームに対して全くアイデンティティを感じていない人はどうでしょうか。
この人はチームのことに対してあまり興味を持っておらず、チームの成功やチームメンバーのことに対してあまり熱意を持ってくれないかもしれません。しかし一方で、人と衝突を起こさずに自らのやるべきことをこなしてくれるでしょう。
つまり各々のアイデンティティの範囲をしっかりと認識して、それに合わせた対応をとってくことが重要になってくるのです。
アイデンティティのイメージ
ではなぜ自らのことではないのに、人は感情的になってしまうのでしょうか。
それはどういうチームかが自らのアイデンティティと結びついていて、チームのイメージを自らのイメージと同一視しているからです。
例えば海外で日本人が不祥事を起こしたときに「同じ日本人として恥ずかしい」というようなコメントを残す人は、日本人に対しての悪いイメージが自らのイメージになってしまうことを嫌がっているのです。
そのため、他者に対しても自らの求めるアイデンティティ像を押し付けてしまうことになります。
アイデンティティの破棄
人は自らのイメージが悪化を避けるため、好ましくないアイデンティティを避けることもあります。
例えば「チームAは業績が悪い」ってイメージがあったときに、そのアイデンティティが自らと結びつくのを避けるためチームAとしてのアイデンティティを持たなくなるかもしれません。
日本人は真面目で勤勉だといった広いアイデンティティに頼るかもしれませんし、「チームAのマーケティングチーム」などさらに細かなアイデンティティとして捉えるかもしれません。
そのように自らのアイデンティティを捨てたり、選んだりすることで、自らのイメージが汚染されるのを防ぐわけです。
アイデンティティが人に与える影響
ではアイデンティティは人にどのような影響を与えるのでしょうか?
1980年中頃に、シグニシア・フォーダムとジョン・オグブはワシントンDCの高校における人種と学業成績の関係を調査しました。
結果、黒人学生の成績が悪かったそうです。
これは一生懸命勉強することや良い成績を取ることを白人のやることとして定義しており、黒人としてのアイデンティティを保つために勉強しないようにしているということでした。
つまり、人は自らのアイデンティティに対してラベリングされたイメージ通りの行動をとるのです。
これを社会学者のH・S・ベッガーはラベリング理論と呼んでいます。他にはレッテル効果とも呼ばれています。
したがって「エンジニアチームは朝来ない」といったようなネガティブなラベリングを行うことは危険といえるでしょう。
なぜならラベリングをすることによって、仮にそうではなかったとしてもそのような行動を取ってしまうようになってしまうかもしれないからです。
アイデンティティを活かした職場づくり
アイデンティティの認識
まずどういったアイデンティティがあるのかと、それぞれのアイデンティティに対するイメージを把握します。
例えば2010年入社ということに対してアイデンティティを感じている人がいるかもしれませんし、営業チームの女性社員ということに対してアイデンティティを感じている人もいるかもしれません。
ポジティブなラベリングを行う
人はラベリングされた通りの行動をとります。
それはすなわち、ポジティブなラベリングをすればポジティブな行動を促すことができるというわけです。
ノースウェスタン大学のリチャード・ミラー博士がこんな実験を行いました。
まずシカゴの小学校のあるクラスの生徒たちに対して、片っ端から「君は綺麗好きだね」と綺麗好きのレッテルを貼っていきました。
すると単に「ゴミを拾ってね」とだけ伝えていた生徒は27%しかゴミを拾わなかったのに対し、綺麗好きのレッテルを貼った生徒は48%がゴミを拾うようになったそうです。
このように個人やチームなど、各々がアイデンティティを感じているものに対してポジティブなラベリングを行うことで、ポジティブな性質を引き出すことができるわけです。
チームの分解
例えば商品Aの営業チームと開発チームが分かれていたとします。
このとき商品Aの営業チームはこう、開発チームはこうと、それぞれのアイデンティティに対してラベリングが行われていることでしょう。
仮によくないラベリングが行われている場合、そもそもそのアイデンティティ自体を無くしてしまうという方法があります。
つまりこの場合、営業チーム・開発チームというチーム分け自体を無くしてしまって、別のチーム編成にしてしまうのです。
そうしてアイデンティティ自体を壊して別のアイデンティティを新たに作ってしまうことで、その後自由なラベリングを行なっていくことができます。
チームの融合
これは実際に知人が会社で行なった例なのですが、社内にやる気がないと言われていたチームがあったそうです。
上から指示してもなかなか状況が改善しなかったそうで、そのチームに選りすぐりのやる気のあるメンバーを数ヶ月間複数人投入したそうです。
その結果、やる気がないと言われていた過去のチームメンバーもやる気のあるメンバーに引きずられるように働くようになりました。
このようにチームのアイデンティティを外部から強引に変えてしまうことで、チーム全体の特性を変えていくという方法もあります。